19世紀後半—イングランド。
ある地方に、広大な敷地を持つカントリーハウスがありました。
屋敷の主人は、ディース伯爵家の令嬢—レディ・キャロライン。
レディ・キャロラインに仕えるのは6人のサーヴァント。
物語は、このカントリーハウスで始まります。
「お茶会をするわ」
「…………は?」
唐突な主の言葉に、バトラーのウィリアム・スペンサーは一瞬の間の後、聞き返した。我ながら間抜けな返答であったとやや後悔もしたが、後の祭りであった。
「だから、お茶会をするの」
「お茶会……ですか」
「なにか不満そうね?」
「いえ、そんなことは……ただ、珍しいなとは思いまして」
社交嫌いのキャロライン・ディース伯爵令嬢。
あまりに有名な事実。
社交界デビューしたばかりの年齢で、こんな片田舎のカントリーハウスで年中過ごしている変わり者の令嬢。
「私だって、お茶会の一つや二つくらい開くわ……と言いたいところだけど、シーズンに帰らなかったから、お父様から最低最悪の嫌味満載な手紙が届いたのよ。2〜3シーズンで結婚相手を見付けられなかったら、行かず後家だなんて、誰が決めたのかしらね?」
「そうですね……誰でしょうか」
無難な返答で受け流す。
こんな状態のキャロラインに、意見など言おうものなら、その何倍の反論がくるか長年の勤めで熟知している。
当たらず障らず。
こういう冷静な状況判断も、バトラーには必要不可欠だ。
「で、あんまり腹が立ったから、お茶会開けばいいんでしょ?って返事書いちゃった」
ああ、この人は……。
ウィリアムは天を仰ぎたくなった。
出来もしないことを売り言葉に買い言葉で言ってしまう。
もう少し、熟考というか、少なくとも短絡的な言動を慎んでいただきたいとあれほど……と心の中で呟く。
そう、あくまで、心の中だけ、で。
「……それで、お日にちは?」
「そうねぇ……いつでもいいけど、みんなによるかな」
「は?みんなによる、とは?」
「私が開くお茶会よ?普通のお茶会じゃ、面白くないじゃない」
「……そうでしょうか。普通でも十分貴重で、良いと思いますが」
嫌な予感がする。
こういう予感は悪ければ悪いほど当たる。
しかし、少しでも改善できるよう、水際でわずかでも止めるよう努めることも『この屋敷に勤めるバトラーとしての職務』であることは、悲しいかな、何よりも大事な仕事のうちの一つである。
「お茶を飲みながら、お菓子を食べながら、優雅にお話をして、楽器を演奏して、チェスやカードゲームに興じて……退屈じゃない?」
「そうでしょうか……十分ではないでしょうか」
同じ返答しか出来ない自分の不甲斐なさが情けない。
「退屈よ!そんなのは他のお茶会で嫌っていうくらい、しているもの。いい?お客様をおもてなしするということは、いかにお客様に『楽しんでいただく』かが重要なのよ?」
それは、お嬢様が楽しみたいのではないか……と思ったが、口には出さなかった。
主に無用な反論はしない。
これもバトラーの資質の一つである。
「だから、何しようかなと考えてね、あるゲームを思いついたのよ」
「ゲーム、ですか?」
★ゲームのルール★ 1ゲーム75分間制で、全7回開催されます。 レディ・キャロラインやサーヴァント達から出題される問題に、答えてください。 ゲームは、なぞなぞやクイズ、謎解きまで様々で、開催回によって難易度ともに異なります。 ※開催回については、予約ページにて確認できるようになります。 1問正解で1ポイント獲得、1ゲームで最大3ポイント獲得できます。 獲得ポイントに応じて、レディ・キャロラインから賞品が贈られます。
★賞品一覧★ ・参加賞 私たちを忘れないでね! ・5ポイント 本を読む時の必需品よ? ・10ポイント 難しくはないでしょ? ・15ポイント いつでもどこでも遊べるわね! ・20ポイント お仕事にも使えて、それ以外でも用途はいろいろ! ・各回全問正解(21ポイント) 当日までヒミツ★
「ゲームは理解しましたが、サーヴァント達とは……」
「やだな〜分かるでしょ?みんなからお客様に、なぞなぞを出してもらうのよ」
「…………」
ご無体な、とはこのことだと思った。
無言になったウィリアムを無視して、キャロラインは話を進める。
「みんながなぞなぞを考える時間が必要でしょ?だから、いつにするかは相談しなきゃね」
「……そうですね。みな、心の準備も必要でしょうから……」
「さ、いろいろ準備しなきゃ!あら、意外にお茶会って楽しいじゃない!」
うきうきした様子のキャロラインを見ながら、楽しいのはお嬢様だけでしょう……と思ったが、やはり敢えて口にはしなかった。
悪い予感は当たる。
さて、他のサーヴァント達になんと説明したものか……。
ウィリアムは頭をかかえたくなった……いや、今回ばかりは、キャロラインの御前を退出した後、本当に頭をかかえてしまった。
レディ・キャロラインの突拍子もない提案。
サーヴァント達も困り果ててはいますが……それでも、レディ・キャロラインのお客様に楽しんでいただきたいとの心意気は十分に理解しております。
さぁ、みなさま。
レディ・キャロラインのお茶会へようこそ。
楽しいひと時をお過ごしくださいませ。